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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)7号 判決

一 請求の原因一及び二の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、審決にこれを取消すべき違法の点があるかどうかについて判断する。

原告は、引用商標中の文字部分「源太樓」と本願商標中の文字部分「玄太郎」とは、外観においても著しく異なり、また、観念においても、「源太」という名の饅頭を売る建物あるいは店舗という観念しか生じない引用商標中の「源太樓」のもつ観念と、固有名称である本願商標中の「玄太郎」のそれとは著しい差異があるから、本願商標と引用商標を付した商品の出所が互に誤認混同されることはなく、したがつて両商標は類似するとはいえない旨主張する。

しかしながら、審決は、本願商標と引用商標との外観及び観念の類否については何らこれを判断せず、引用商標中の自他商品の識別機能を有する部分の一つである「源太樓」の文字部分から生ずる「ゲンタロウ」の称呼と、本願商標中自他商品の識別機能を有する「玄太郎」の文字部分から生ずる「ゲンタロウ」の称呼は同一であるから、両商標は称呼を共通にする類似の商標であるとしたものであり、審決の結論はこれを是認することができるところ、審決の判断していない両商標の外観及び観念の類否をあげつらつて、それを審決取消事由とすることは許されないのみならず、たとえ、原告主張のように、両商標が外観及び観念の点において相違するとしても、両商標が類似の商品に付されるときは、それらの商品の出所の混同が生ずるおそれがないとはいえないから、原告の主張は結局において理由がない。

原告は、また、「樓」とは建物あるいは店舗を表わす普通名称であるから、引用商標中の「源太樓」の部分からは、「源太」という名の饅頭を売る建物あるいは店舗という観念しか生ぜず、更に引用例においては、「源太樓」の文字が別紙第二のとおり円の中央部に縦書きされ、その両横には住所及び電話番号が縦書きされて「源太樓」の所在を特定しているから、「源太樓」の文字は「源太饅頭」の販売地を表示するものにすぎず、また、「樓」は建物あるいは店舗を表わす普通名称であつて、「株式会社」「有限会社」「商会」等の企業を意味する普通名称を含む商標と同様、商標の類否を判断するに当つては、その部分は除外して考えるべきであり、結局引用商標中の「源太樓」の文字部分の要部は「源太」の部分にあり、本願商標と引用商標とはこれを付した商品の出所が互に誤認混同されるほど類似しているとすることはできない旨主張する。

しかしながら、「樓」が建物あるいは店舗の意味を表示する語であるとしても、そのことのために、引用商標中の「源太樓」の文字部分が、単に「源太饅頭」を販売する店舗を表わすにすぎないもの、すなわち、引用商標において、「源太樓」の文字部分は「源太饅頭」の文字部分のほかにその要部となるものではないとすべきではなく、審決認定のとおり「源太樓」の文字表示部分もまた引用商標の要部であるとすべきであり、また、「樓」が建物あるいは店舗を意味し、「源太樓」が屋号もしくは商号を表示したものであるとしても、商標としての類否の判断に当つては、「株式会社」、「有限会社」、「商会」等の文字を含む商号商標の類否判断におけると同様、「源太樓」から「楼」を除外して判断すべきであるとすることもできないから、原告の主張はいずれも理由がない。

三 以上のとおりであつて、本願商標と引用商標とは「ゲンタロウ」の称呼を共通にする類似の商標であるとした審決の判断に誤りはなく、審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求は理由がないからこれを失当として棄却する。

〔編註〕 本件における請求原因は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、昭和五二年五月一九日、別紙第一(〔編註〕省略)のとおり、肉太で「玄太郎」と縦書きし、その右側に「玄米入り食パン」と小さく縦書きして成る商標(以下、「本願商標」という。)につき、第三〇類「パン」(後に第三〇類「玄米入りパン」に補正)を指定商品として商標登録出願をしたところ、昭和五六年二月二六日拒絶査定を受けたので、同年五月七日これに対する審判を請求し、特許庁昭和五六年審判第九九三〇号事件として審理されたが、昭和五七年一一月二日右審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その謄本は同年一二月一八日原告に送達された。

二 本件審決の理由の要点

本願商標の構成、指定商品及び商標登録出願の日は、前項記載のとおりである。

これに対し、登録第四六〇九二五号商標(以下、「引用商標」という。)は、別紙第二(〔編註〕省略)のとおりの構成より成り、旧第四三類「饅頭」を指定商品として、昭和二九年五月一八日登録出願、昭和三〇年二月二五日設定登録、昭和五一年七月九日商標権存続期間更新の登録がされたものである。

よつて按ずるに、本願商標の前記構成中、自他商品の識別機能を有する部分は、肉太に顕著に表わされた「玄太郎」の文字にあるとみられるので、本願商標からは「ゲンタロウ」の称呼を生ずることが明らかである。

これに対し、引用商標の構成は別紙第二のとおりであるところ、右構成中、自他商品の識別機能を有する部分は、顕著に表わされた「源太饅頭」及び「源太樓」の文字部分にあるとみるのが相当である。したがつて、「源太饅頭」の文字より「ゲンタマンジユ」又は商品の普通名称である「饅頭」の文字を省略して単に「ゲンタ」の称呼を生じ、「源太樓」の文字より「ゲンタロウ」の称呼をも生ずるものというべきである。

してみれば、「ゲンタロウ」の称呼を生ずる本願商標と、「ゲンタロウ」の称呼をも生ずる引用商標とは、「ゲンタロウ」の称呼を共通にする類似の商標であり、かつ、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品とは互に類似する商品であるから、本願商標は商標法第四条第一項第一一号の規定に該当し、登録を受けることができない。

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